仕事の合間に読みました。
白ゆき姫殺人事件(著・湊かなえ)
化粧品会社の美人OLが殺された。
その犯人はもしかしてあの人では…?
という単なる「憶測」が『匿名』の人たちにより加速していき、一人の「犯人と思わしき人」が徹底的に攻撃されてしまう……というストーリー。
Twitterやヤフーニュースのコメント欄などで匿名をいいことに言いたい放題な人いますよね。
「あの人は○○人だ」とか「障がい者の顔をしている」とか「死刑にしろ」とか。
ざっくり言ってしまうとそんな「モンスター」たちにスポットを当てた作品です。
(媒体は基本、週刊誌ですが)
心理学の「ボタンを押して『見知らぬ他人』に電気ショックを与える」という実験があるみたいですが、
・「見知らぬ他人」と自分との心理的・物理的距離が離れているほど(顔が見えない、悲鳴が聞こえないなど)
・自分自身の匿名性が守られているほど
人は強い電気ショックを与える傾向にあるようです。
はい、知ってました。
いつものインターネットのやつですね。それを趣味にしている人もいるくらいですし。
つまりなんというか、作中に登場する「匿名をいいことに言いたい放題な人」というのは読者である自分自身もなりかねない存在というわけで、「なんてひどい話だ!」と思う一方、「自分もそうなるかもしれない…」と複雑な気持ちにさせてきやがるのです。
作品の題材も良いですが、湊かなえさんの作品で僕の好きなところの一つが、「ねちっこい一人称」です。
「白ゆき姫」も「『匿名の記者』が『匿名の情報提供者』の話を聞く」という独白形式の一人称で、まあ、その文章の半端ないねちねちねちねちした感じがすごいです。
特に、中年の女の一人称がやばい。やばすぎてやばい。湊さんは元主婦とのことだけど、やばい。こんな奥さんが近所にいたらやばい。(語彙力崩壊)
湊さんの作品は「イヤミス」(嫌な気持ちになるミステリー)と呼ばれていたりしますが、展開はもちろん、一人称の執拗に最悪なねちっこさ(※褒め言葉)が「イヤミスの女王」と呼ばれる所以なのかなあと思ったり。
作品自体は普通の文庫本の厚さですが、ページの三分の一は「設定資料」的なものなので(それも面白いですが)、本分は短めで割とさくっと読めてお手軽に嫌な気持ちになれます。
湊さんの作品は他にも色々おすすめですが、無難に手を出していくなら「告白」とか「贖罪」がいい感じに嫌な気持ちになれて最高なので良いと思います。
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